山の上の家

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 ギシギシと床が鳴る。とても懐かしい光景が脳内へと入ってきていた。確かに幼少期僕はここで遊んでいた。彼女と二人で鬼ごっこやかくれんぼ等、思いつく遊びを散々していた。どうして今まで忘れていたのだろうか。 「安心して祐一。もうあの者達はいないから」 「えっ?」 「貴方に敵意を持つ者はもうこの家にはいないわ。みーんな、ね」  霧はまたもやクスクス笑うと僕を部屋へと通した。そこは彼女の私室らしく、様々な荷物がおかれていた。しかし年齢に相応しそうな置物はなく、ちょっと異様な風景と化している。僕は適当に腰を降ろす。 「なんだかとても懐かしい気分だよ。霧。」  霧は僕にお茶を一杯手渡すと、自らも隣に腰を降ろした。 「十年振りですもの。積もる話も色々あるわね。今日は楽しい一日にしましょうか」  それから僕達は色んな話をした。主に子供の頃遊んだ思い出話だ。初めて出会った頃となんら変わりない彼女に違和感を覚えつつも僕等は楽しい昔話に花を咲かせた。  鴉が鳴く時間になってようやく僕等は話に一区切りつけると外に出た。帰る気は毛頭なく、単に外の空気を吸いたくなったからである。霧は玄関口で佇んでいる。僕はそっとその背中を抱きしめてこう言った。 「ただいま。霧」 「お帰りなさい、祐一」  彼女はとびきりの笑顔で返した。 完
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