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外周中の妄想
んんあぁっっ
声にならない声が口から漏れる。
激しい鼓動。
もつれる脚。
行き場のない腕。
それでもテンポを崩すまいと音楽を流し続ける脳。
前には誰もいない。
後ろから微かな息切れが聞こえる。
正直もう追い抜かれたい。楽になりたい。
後輩に追い抜かれるわけには行かない。
矛盾する二つの思考が私の脳を支配する。
頭を振り払ってその思考を放棄しようとしても頭を振るう気力なんてなかった。
このまま、外周を終えたらいつものように集合して偉そうな顧問に言われるんだろうな。
「部長がこのタイム出せるんだから、みんなも出せるよな!」
「これからもみんなを引っ張っていけよ部長!」
まるでこれが当たり前かのように。
私が当たり前のようにそれを成しているかのように。
....あぁ、このまま倒れてしまったら
私はいつも考える。
このまま倒れてしまったら、私の努力を認めてもらえるんだろうか。
倒れるまで頑張っていたのか。
明日からもう頑張らなくていいぞ。
そう言ってもらえるのだろうか。
無理すんな、いつも頑張ってるもんなって。
考える思考を置いて周りの光景は後ろに流れていく。
けど、私は倒れないし、そう言ってもらえることもない。
私はいつも通り、当たり前に、1番に校門前にたどりつくのであった。
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