318人が本棚に入れています
本棚に追加
第11話 待ち合わせ
「美香の姉の秋山 清香です。突然の電話ですみません」
『清香さんですね。電話もらえて嬉しいです』
「電話したのは、聞きにくいのですが┅┅」
『何かあれば気にせず、聞いてください』
「美香とは、どのようなお付き合いなのでしょうか?」
『勘違いして欲しくないのですが、妹さんのことは、ご主人とのアレを聞いて協力したくなっただけで、正直、興味がありません』
「それなら良かったです」
何故なら、美香は光一と高塚に二股をかける気満々でいるから、もしも高塚が美香に本気になってしまったら、申し訳ない。
『それって┅┅』
「いえ、そうじゃなくて」
高塚は清香の言葉を聞いて、高塚と美香をくっつけたくない、つまり自分に興味があると思ったのだろう。
『僕はこれからも清香さんに協力したいと思っているので、一度お会いして今後のことを相談しませんか』
「相談ですか?」
『ええ、清香さんが今後どうしたいのか聞いておかないと、妹さんがイレギュラーな行動をしてきた時に困りますから』
「そうですね」
確かに、男に対して積極的で奔放な美香ならイレギュラーと言うより、それがレギュラーなのだろう。
「それじゃあ、一度お会いして相談させてもらえますか?」
清香は最初から高塚に会いたいと思ったが、自分から誘うのはためらわれたので、高塚のように積極的に誘ってもらえるのはありがたかった。
『良かった。いつ頃なら空いてますか?』
「高塚さんはお仕事があるから、昼は難しいですか?」
光一が浮気をしていて、いつも美香が家にやってくるからといって、主婦が夜に出歩くのははばかられる。
『僕は、まあサラリーマンと言えばそうなんですが、時間は自由が効くので昼間でも構いませんよ』
「昼間なら、いつでも大丈夫です」
『じゃあ、予定がなければ、さっそく明日お会い出来ますか?』
「都内なら大丈夫です」
『じゃあ、ご指定の場所に車で迎えに行きますよ』
車で迎えにくると言う高塚の言葉でも、つい、光一と比べてしまう。
そして初めての待ち合わせは、結局、清香の住まいから近いと言う理由で、上野の松友屋の新館前で待ち合わせになった。
◇◆◇
清香はルーティンになりつつある朝食の果物にリンゴを食べて、念入りに化粧水を肌に叩き込んでいく。
「デートじゃないのに緊張する」
友美の話しだと高塚は清香を気に入ってくれていると言う。
自分を気に入っている相手に会うのは、嬉しい反面、幻滅されないかと心配にもなる。
だから余計に気合いが入ってしまう。
痩せてからは髪や肌は手入れをしてきたので、昔勤めていた頃に着ていた服を用意しておいた。
シースルーを重ね合わせた青いワンピース。
準備を整えて、清香は待ち合わせの松友屋の新館に向かう。
10分前には到着したが、高塚はすでに車を駐車スペースに停めて待っていた。
「はじめまして、高塚 翔です」
清香を早々に見付けて車から出てきた高塚は、思っていたよりもずっと背が高く、腰の位置も清香の胸くらいはありそうだ。
髪と瞳はブラウンで、染めていないとしたら、少し色素が薄いのだろうか?
日本人らしい切れ長で涼やかな目元だが、鼻が高く口元はキリッと結ばれている。
「はじめまして。秋山 清香です」
こちらから挨拶をすると、緊張していたのか高塚のキリッと結ばれていた目元と口元が嬉しそうにほどける。
「いやあ、写真通りの方だな」
高塚は右手で頭をかいて、少しだけセットした髪が乱れて、何だか可愛い。
「昔の写真をご覧になったんですよね」
「はい、そうです。あのこれからのことを相談するのにひと目が少ない場所がいいと思うんですが、お連れしてもいいですか?」
「それで車で┅┅」
「会員制のバーにお連れしますよ」
最初のコメントを投稿しよう!