第12話 会員制のバー

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第12話 会員制のバー

「会員制のバー?昼間からお酒を飲む気てすか?」 ここでも清香の真面目な顔が表に出てしまう。 「別にお酒を飲むのが目的ではありません。妹さんのことを話すのに、ひと目を気にしないですむ場所ってだけなので」 他の男性だったら、会員制のバーなんて、下心があるのではないかと疑っていたかもしれない。 けれど高塚は家柄なのか元からの性質か、下品なところや、がっついたところがなくて、一緒にいても安心出来ると感じる。 「分かりました。お願いします」 「じゃあ、車に乗ってください」 高塚のエスコートで車の助手席に乗ると、高塚は清香に触れないように気を使いながらシートベルトをするようにジェスチャーで示す。 ◇◆◇  車で移動して到着したのは、ヒルズと呼ばれる商業施設で、最上階に会員制のバーがある。 周辺は、初めて来た場所だが東京タワーが大きく見えるから港区辺りだろうか? 「頭に気を付けて」 高塚は誰にでもそうなのか、車を降りる時でさえ、相手のことを気にかけてエスコートしてくれている。 クズ男と結婚していなかったら、すでに高塚が清香の推しになっていたかもしれない。 高塚はその見た目だけでも、光一とは比べ物にならないし、結婚してから太っていた清香に気を使ってくれる男性なんて1人もいなかった。 「さあ、こちらです」 ビルの中に入ると、大きなエレベーターがたくさん並んでいたが、人も多くてエレベーター待ちをしている。 「向こうのエレベーターです」 関係者専用のエレベーターが脇にあり、乗り込むのは高塚と清香だけだった。 エレベーターは会員カードを読み込ませると、階ボタンを押せる仕組みになっているらしい。 「くす」 清香が物珍しいものでも見るように、高塚の一挙手一投足を見て、回りもキョロキョロ見ているので、高塚は笑ってしまった。 「┅┅」 笑われたことで清香はシュンとなり、下を向いてしまう。 「清香さん、笑ってしまって、すみません。でも、あなたがおかしくて笑ったんじゃありません」 「私が田舎者丸出しで、キョロキョロ回りを見渡してたからじゃないんですか?」 「可愛くて」 え? 高塚からの思いもよらない言葉に、顔が赤くなり眉間に手の甲を当て顔を隠している。 清香は思わず瞼を何度もパチクリさせて、高塚を見ると顔が真っ赤だ。 「くす」 自分の方こそ、よっぽど可愛いじゃないと思った時には、清香も笑いがこぼれてしまった。 「あ、ごめんなさい」 「笑うのはいいことです。でも、今の笑いの意味は知りたいですね」 「┅┅可愛くて」 「え?」 高塚は清香からの予想外の言葉に、エレベーターの壁に腕をついて、喜びを噛みしめてしまう。 「あの、着いたみたいですよ」 エレベーターは目的地に着いており、ドアが開いていた。 「こほん、失礼しました」 「くすくすくす、いいえ、こちらこそ」 高塚は先に降りて、エレベーターのドアが閉まらないように、端に手をかける。 エレベーターを降りると、ウエイターが控えていて、すぐに店内に案内された。 「半個室の窓際になりますが、こちらでよろしいですか」 案内された席は、窓にソファが設置されていて、まるでデート用のボックス席のようだったが、確かに会話を聞かれる心配はなさそうだ。 「ここで大丈夫ですか?」 大きな手が席を示して、並んで座るソファを清香が嫌がらないか確認してくれる。 「はい」 ドキン 何故か、返事をした途端、心臓の鼓動が大きく高鳴ってしまう。 嫌だ~、顔まで赤くならないでよ。清香はこっそり指先で顔の熱を確かめた。 席について、ウエイターから渡されたメニューで2人とも冷たい烏龍茶を頼む。 目の前は大きなガラス張りで東京タワーも見える。 その時、清香のスマホが鳴り、画面を見ると美香からの電話。
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