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第18話 理想の結婚式
1ヶ月後の大安吉日ではなく友引
ラグジュアリーホテルのスイートルームを思わせる落ち着いた雰囲気の大人のバンケットに見えるが、実は高塚の友人の別宅を借りて飾り付けている。
光り輝くシャンデリアや素材の上質さを感じる革製品が置かれた空間は、大人の隠れ家をコンセプトに作られたらしい。
ここが、本日の舞台。
美香にとっては高塚との待ちに待った結婚式の日。
「ねえ美香、新郎の人、すごく素敵ね。まるでモデルみたい」
新婦の控え室で、友人たちが順番に写真を撮っている。
「いつの間に、あんな人つかまえたのよ」
「知り合いの紹介なんだけど、美香の写真を見て是非にって言われて会ったの」
「素敵ね」
友人たちを羨ましがらせることに成功した美香は、得意満面である。
そして美香らしいウエディングドレスは、膝より上のミニスカートが三段のフリルで飾られている。
ノースリーブに胸元が露な大胆なカットで、お前は芸能人かと突っ込みたくなる。
多くの人に高塚との結婚式を見せびらかしたい美香は、親戚一同に小学校から短大までの友人、ちょっとした知り合いまで結婚式に招待した。
もしも新婦を祝う為に来たのかと言ったら、半数の人が、高塚物産の跡取りとの繋がりの為に来たと言うのが本音のところだろう。
さて、新郎の服装は、レンタルで借りてきた安物だが、上背もありスタイルの良い高塚が着ると上等の服に見えるから不思議だ。
そして高塚物産の三代目にしては、招待客が少ない。実は全員エキストラだから。
来ている友人と言えば、この邸宅を貸してくれた小野だけである。
両親への感謝の言葉、花束贈呈を経て、祝辞が次々と述べられていく。
高塚サイドは、会社の部下からも祝辞が届いていないようで、美香が無理矢理書かせたような美辞麗句が紹介されていく。
「それでは、新婦の美香さんと一番仲の良いお姉さんご夫婦にお祝いの言葉をいただきましょう。まずは、お姉様である秋山清香さん、お願い致します」
「妹の美香は、子供の頃から欲しいものは絶対に手に入れる子でした。今回も高塚さんをゲット出来て喜んでいます。美香のことをよろしくお願いします」
「覚えてなさいよ」
姉の清香の祝辞に不満なのか、美香が目の前の割り箸をバリンと折っている。
「はい、交代」
清香が、光一にマイクを渡した。
「僕は、美香ちゃんを本当の妹のように思ってきました。だから高塚さんとも弟のように仲良くしたいと思っています」
その時、後ろの巨大モニターに動画が流されていく。
動画◆◆◆動画
美香「高塚さんのことを好きかって?お金持ちだから結婚相手としてはね。恋人は別だから」
美香が、清香の質問に答えた言葉だが、そこだけを抜粋して動画が流された。
続いて、光一と美香がリビングでいちゃついていたシーンが映る。
光一「清香はブクブク太って醜いのに、美香はいくつになっても女子高生みたいだな」
美香「それって女子高生が好きってこと?」
光一「まあ、女子高生が嫌いな男はいないだろう」
美香「じゃあ、今度、高校のセーラー服着てあげようか?」
光一「マジで?じゃあ、俺は高校の数学教師な」
美香「きゃははは、何それ、変態」
動画◆◆◆動画
「何よ、これ。消して。止めて」
美香がモニターを背に向けて両手をあげているが、モニターは隠せていない。
「最低だな」
高塚が侮蔑の表情を美香に向けている。
「高塚さん待って。これは何かの間違いよ。嫌よ。絶対に金持ちと結婚するんだから」
親戚や友人は口を開けて動画を見ている。
「美香、あんたお姉ちゃんの旦那と何てことを」
「何よ、お母さんは何も知らないでしょ。お姉ちゃんが女として終わってるから、お義兄さんが私を好きになっただけじゃない。恋愛は自由でしょ」
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