第19話 明かされていく真実

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第19話 明かされていく真実

 動画◆◆◆動画 新たな動画が流れる。リビングで、光一と美香のキスシーンから始まる。 「ぴちゃ、くちゃ、クチュ、チュウ」 何度も顔を傾けて、舌を絡めあい淫らな音を音声が拾っていく。 光一「美香の肌はまるで赤ちゃんみたいだな」 美香「美香が、赤ちゃんかどうか、お風呂で確認してみたら?」 光一「風呂で?今、風呂を入れてくるからな。待ってろよ」 光一は美香を残して、風呂場へ向かう。 美香「本当にキモい男。あの女の夫じゃなければ、触られたくもない」 美香は汚いものを拭うように、唇を袖で拭いている。 動画◆◆◆動画 「何だよ、これ。編集だろ。何で美香が、こんなこと、絶対に嘘だ」 光一は信じられないものでも見たと言うように、何度も目を拭っている。 「私も教えて欲しいんだけど、光一はキモくて触られたくないのよね?誰も頼んでないのに、何で私の夫と浮気なんてしたのよ」 清香が、友美と一緒にこの動画を見た時から、ずっと疑問に思っていたことを口にした。 「アハハハハっ、はは。あんたが傷付いたなら、まあいいや」 美香の目はすさんで、何かしでかしそうな危険なものをはらんでいる。 「何言って」 ここまで、美香に恨まれる覚えはない。むしろ、旦那を奪われた清香こそ美香を恨んで当然ではないか。 「言っとくけど、私はあんたに恨まれる覚えなんてない。いつも人の物を欲しがって泣き真似して奪ったのは、あんたでしょ」 「そう、優しくて、何でも出来て、あたしの面倒も見て、そんなあんたが、大嫌いだったのよ」 美香は長年抱えてきた恨みとでも言うように、腹の内をぶちまけている。 「本気で言ってるの?」 「ああ、あんたは知らないのか。あたしが本当の妹じゃないって」 「何、バカなこと言って」 「何でお母さんがあたしに優しくて、お姉ちゃんに厳しかったかって?あたしが他人だからに決まってるでしょ」 バシン 「いい加減にしなさい。お母さんは、私よりも何倍もあんたを大切にしてきたじゃない」 清香が、美香の頬を手の平で叩く。 「他人だからよ」 美香は、ヨロヨロと招待客のテーブルに歩いていく。 「あんたは私の妹よ」 清香は、美香を目で追う。 「あんたのそう言うところが、たまらなく嫌いなんだよ」 テーブルの上のナイフをつかみ取り、美香は清香めがけてウエディングドレス姿で走ってくる。 グサリ ナイフが肉に刺さる感触が、美香の手に伝わってくる。 ガクン 膝をついたのは、清香ではなくて、新郎の高塚だった。 「どうして高塚さんが、この女をかばうのよ」 美香はその場に座り込み手にした血まみれのナイフを床に置いて、泣き叫ぶ。 「高塚さん、高塚さん、しっかりして」 清香は、高塚に抱きついて揺すり起こそうとする。高塚の脇腹からは血が吹き出ている。 「あんた、高塚を動かすな。もしもし、救急車をお願いします。友人が刺されました。住所は┅┅」 高塚の友人である小野が素早く救急車を手配している。 ガシャン、ガシャ 清香が一気にテーブルクロスを引っ張ると、上に乗っていた物が音を立てて、床に落ちる。 テーブルクロスにナイフを突き刺して、その穴に指を入れて引き裂いていく。 「ぐすん、高塚さん、死なないで」 清香は何枚もテーブルクロスを引き裂くと、今度はその生地を高塚の腹にキツく巻き付けていく。 その時、まさにこの場にピッタリな動画が流れる。 動画◆◆◆動画 美香「高塚さんは高塚物産の三代目でお金持ちなんだよ。もしも死んだら、財産は美香とお義兄さん2人の物だよ」 光一「お前、まさか、結婚してすぐに殺す気じゃないよな」 美香「ちょっと声が大きい」 光一と美香は辺りを見回して、誰もいないことを確認している。 その後は2人の長いキスシーンが映し出される。 動画◆◆◆動画
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