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第2話 余分なお肉とメイク教室
浮気女を残していくのは心配だけど、仕方がない。
「服を買いに行ってくるから、留守をよろしく」
気を取り直して、着れる服を買いに行こう。
「服を買いに行くの?はあ、お姉ちゃんにとってお義兄さんて、お給料を運んでくる財布代わりなんだろうね」
「ははは、その通りね。でも、夫婦ってそんなもんよ」
美香の嫌味にも動じないフリをする。
家を出て、駅前の手頃なお店に入り、マネキンが着ている無難な服を店員に頼んで出してもらう。
洋服を持って、フィッティングルームに入り、数着の服を壁にかける。
「ん?」
足からはいたスカートが、足を入れた瞬間からキツそうな予感。
「全然ダメ。ぷはー」
息を止めて、お腹を引っ込めても腰がキツすぎて、服が入らない。
前は9号の服がピッタリだったのに、まさか号数が上がってしまったの?
(ぎゃああああ)
フィッティングルームで叫びたいのを必死で我慢する。
「上の号、11号を見せてもらえますか?」
「かしこまりました。念の為、13号もお持ち致しますね」
頼んでないわよ。と思いつつ、店員の持ってきた11号と13号を受け取り、フィッティングルームで着替える。
「もう少しなのに」
11号のウエストがしまらない。
清香は嫌そうな目で、13号の服を見て手に取る。
「入った。でも13号だなんて」
服のデザインによって、サイズが違うって言うし、これは、たまたま13号だっただけかもしれない。
フィッティングルームから出て、レジに向かい暗い顔で手にした服をカウンターにおく。
「上下セットで、15980円になります」
いつもは0が、一つ少ない服しか買わないのに、今までは自分のサイズを9号だと信じて疑わなかったのに。
これも全て、浮気したあいつらのせいよ。
清香の中で、復讐の炎が小さく灯った瞬間だった。
「まだ、服だけじゃダメ。メイクも料理もして、旦那の気持ちを取り戻す努力をしてみよう」
清香は、文化センターに入っているメイク教室の体験入学に向かう。
文化センターの前で、メイク教室が何階にあるか確認した。
「3階ね」
エレベーターのボタンを押す。
メイク教室に着いて、受付で、体験入学をしたいと伝えると、予約が必要だと言われる。
「生徒さんのモデルになってくれるなら、無料でメイクしますよ」
清香は無料と言う言葉に強くひかれて、モデルを引き受ける。
「じゃあ、ドレスルームで顔を洗って、化粧水と乳液をつけて、戻ってきてください」
清香は、いつも通りぱぱっと顔を荒い、手のひらに化粧水と乳液を順番に落として、手のひらでまぜて、一気に顔に塗りたくる。
「終わりました」
「こちらにどうぞ」
メイク教室に習いに来て3回目の生徒さんが、清香のメイクを担当する。
それって、2回しかメイクを習ってないってことでは?
騙された感満載だが、今さら後には引けないので、黙ってメイクが終わるのを待つ。
「お疲れ様でした」
メイクが終わったら鏡を渡されて、自分の顔を確認する。
「いい感じね。ありがとう」
清香は、元々整った顔をしているが、今はアゴに肉がついている。
かなり濃い目のメイクだけど、毛穴は消えたし、目も大きく見える。
「じゃあ、また時間を見付けて来ます」
メイクは習えなかったけど、希望の美しくなるメイクは出来た気がするし、買い物して帰ろう。
スーパーで買い物をして家に向かう。
マンションの5階の角部屋が、光一と清香の暮らす部屋だ。
ふくよかな手が、鍵を開けて部屋に入ると、光一と美香が隣り合わせでソファに座り、抱き合って唇を重ねようとしている。
ドサリ
その瞬間、清香は買い物をしてきた袋を足元に落としてしまった。
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