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第5話 隠しカメラ
日課となった隠しカメラのチェック。
最近の隠しカメラは、小型で音声も画像もクリアで優秀だ。
「また、くっつき始めた」
美香は、旦那の隣に座り、旦那の腕に絡み付いて、胸を押し当てている。
「お義兄さんモテたと思うのに、何でお姉ちゃんなんかと結婚したの?」
男を褒めながら、ライバルの女を貶めるプロのワザね。恐ろしい子。
「いやあ、自分でも不思議なんだよな。付き合って半年で結婚するなんてな」
「ふ~ん」
自分から聞いたくせに、光一が清香の話しをするのは聞きたくないらしい。
いや、興味がないという感じ。
「お義兄さん、来週、美香の誕生日なの。欲しい財布があるんだけど、週末一緒に出かけようよ」
「じゃあ、3人で出かけるか?」
「お姉ちゃんと一緒なんて嫌よ。まるで保護者参観じゃん」
昔から、自分が可愛いと思うポーズを鏡を見て練習していて、今、やっている頬をふくらませて唇をすぼめる顔もその1つ。
「分かった、分かった」
光一は仕方ないと頭をかきながらも、満更でもない様子。
2人がデートする様子を調査会社に依頼して撮影してもらわなきゃ。
◇◆◇
週末、調査会社に依頼をして夫の光一と妹の美香が一緒にいるところを、動画撮影するように依頼しておいた。
横浜に出かけた2人は中華街でランチをした後、堂々と手をつないで、デートを楽しんでいる。
美香の誕生日プレゼントを選ぶ為に、横浜のデパートに移動する。
ピンクの厚底サンダルが、ヴィ○ンの店の前で立ち止まると、光一の腕に自分の腕を絡ませて、店内に引っ張っていく。
「これ、この長財布が欲しいの」
お目当ての長財布を手にとって、光一に見せる。
「財布がこんなにするのか」
光一は、長財布の値段を見て驚く。
「ダメなの?」
上目遣いに瞳を潤ませる美香の演技が冴えわたる。
「ダメなはずないだろ」
こうして、美香の誕生日プレゼントとして、ヴィ○ンの長財布10万円以上をプレゼントした。
清香は、調査会社から送られてきた動画や写真を見て、腸が煮えくり返っている。
清香は月に5万円を渡されて、家のことをやりくりしているのに、誕生日だって結婚してからはプレゼントなんてもらってもいない。
どうして美香ばかり。
私たちは夫婦じゃないの?夫婦って、こんなものなの?
釣った魚に餌はやらないって言うけど、妻は釣り上げた魚で、美香はまだ釣り上げていない幻の魚なわけ?
「この屈辱、絶対に忘れないわ」
◇◆◇
「友美さん、急に呼び出してごめんね」
清香は、以前、勤めていた動画サイトを配信する会社の元同僚に連絡をした。
「気にしなくていいよ。どこか入って話そう」
久しぶりに再会した2人は、待ち合わせ場所の近くの喫茶店に入ることにする。
注文したコーヒーが来てから、話し始めた。
「旦那が、妹と不倫してるみたいでさ、決定的な証拠がないし、私1人じゃどうすればいいか、分からなくて」
清香は、今まで撮り貯めた動画を見せて、友美に復讐の手伝いをしてくれと頼みこむ。
「復讐って、どこまでやりたいの?最後は旦那とよりを戻したいの?妹と仲直りしたいの?それとも2人を破滅させたいの?」
友美の言葉に、復讐には、清香の揺るがない決意が必要なのだと気付かされる。
どうだろう。私はどこまで許せて、どこまで復讐する気なのか?
ピコン
スマホに、隠しカメラで撮影された動画が送られてくる。
友人に会うと美香に連絡しておいたら、さっそく光一に会いに家に来ている。
「送られてきた動画で、どの程度、復讐するか決めるっていうのはどう?」
決心のつかない清香に、友美が提案した。
「うん。そうする」
清香もそれしかないような気になり、一緒に送られてきた動画を見る。
そして衝撃的な現場を目撃することになった。
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