第6話 友美の言葉

1/1
前へ
/20ページ
次へ

第6話 友美の言葉

 光一と美香の様子が送られてくる画像を見る度に胃が痛くなる。 動画◆◆◆動画 【2人は、まるで恋人同士のように部屋で寄り添って、濃厚なキスを交わしている。 「お義兄さんも可哀相だわ。あたしだったら、もっとお義兄さんを大切にしてあげるのにな」 若い体が、光一にしなだれかかるように全身を預けている。 「ああ、俺も清香じゃなくて、美香に先に会いたかったよ。あの女は結婚した途端、ブクブク太って、一気に老け込みやがって」 光一の台詞は、まるでゴミでも吐き捨てるような侮蔑を含んでいる。 「それに比べて、美香の肌はまるで赤ちゃんみたいだな」 本当に、赤ちゃんに触れてでもいるように、美香の肌に手を滑らせていく。 「美香が、赤ちゃんかどうか、お風呂で確認してみたら?」 美香は手を光一の顔に近付けると、人差し指だけで光一のアゴに触れる。 「風呂で?」 ゴクリと光一の喉が鳴る。 「風呂を入れてくるからな。待ってろ」 光一は美香を残して、風呂場へ向かう。 「○○○○○○○」】 動画◆◆◆動画 「┅┅」 最後の美香の台詞を聞いて、清香は絶句する。 この女は人間じゃない。 「これ、本当に妹なの?恐すぎるよ。見てこれ、鳥肌立っちゃった」 友美も、信じられないものを見たと、腕の鳥肌をさすっている。 「どこの昼ドラだよ。悪いけど、マジで最低な旦那と恐ろしい妹だな。これ、悩む必要ってある?どの辺に?」 友美は、こいつらには天罰が必要だと騒いでいる。 「ううん、徹底的に痛め付けてやろう。私は何をすればいい?」 美香の最後の台詞で清香の腹は決まった。あいつらは犬畜生にも劣る。 清香の目から、希望と言う光が失われていく。 「おばさんに、妹の見合い相手、それもお金持ちを探してもらって。私も周りに女と遊びたい金持ちがいないか探してみるから」 友美は、手帳のメモ欄を出すと計画を練っていく。 「部屋中にカメラ仕掛けて、お風呂もベランダも全部。社会のゴミは根絶しましょ。編集は私に任せて。プロだから」 友美は、光一と美香を社会の敵と判断したようだ。 「うん、任せる」 「そうだ。調査会社に依頼してるよね?物凄い高いって言うけど、本当?」 「物凄い高いよ。人1人使うのって、簡単に何十万って消えそうだよ」 深いため息をつく。 「無料ってわけにはいかないけど、私の弟と弟の友達を安く使うのはどうかな?」 「助かる~」 願ってもないと直ぐに了承した。 「あと、清香の為に言うから、傷付くこと言ってもいいかな?」 「復讐の為なら何でも言って」 清香はどんな酷い言葉も、光一と美香にやられていることに比べたら何でもないと思う。 「会社辞める前は、痩せてて美人だったよね?フィットネスでもエステでも通って、出来るだけ元に戻して」 心を鬼にして、清香の為にキツイ言葉を投げかける。 「それが傷付くことか。ヒック、ヒック」 やはり傷付いたのか大粒の涙を流して、泣き出してしまう。 「ごめん、酷いこと言って。でも」 清香を泣かせてしまったと、友美の胸も痛んでいた。 「違うの~嬉しくて。私の為にそんなこと言ってくれるの友美だけだから。そんな優しい言葉聞いたの久しぶりだよ。ヒック」 清香は、友美が心から忠告してくれているのが分かった。 「私、本気で痩せるから、見てて。貯金全部使って」 「ストップ。結婚してるんだから、旦那のお金でエステくらい行っちゃえば」 「うん、でも月に5万しかくれなくて、そこから保険とかも払ってるから、カツカツなの」 「甲斐性までないのか」 友美の怒りは爆発寸前だった。 「とにかく昔の自分に戻れるように努力するよ」 「うん」 清香と友美は、自然とテーブルの上で手を合わせて、社会のゴミを片付ける為に作戦を立てていく。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

318人が本棚に入れています
本棚に追加