勇者結婚譚

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「そんなもの、ある?私は、魔法の知識は、たくさんある」 「いやー、だからさー、例えば、田舎に帰って花でも育てるとかさ。もっとゆっくりすればいいと思うんだよね」 「でも、アレンも、仕事をする。支えたい」 アレンの顔がほころぶ。 「そうか、その気持ちは嬉しいぞ」 「うん。私もアレンのそばにいたい」  ユリウスはなんでこいつこんなに鈍いんだ!!と叫びだしたくなるのを我慢する。    もはやミオの言葉はほぼ告白に近いが、肝心のプロポーズの言葉はアレンの口からは発せられないのだった。  アレンとミオのふたりは微笑みあっている。周囲にはお花でも舞散っていそうなほんわかした空気だ。    業を煮やしたユリウスがテーブルを叩いて立ち上がった。 「だーかーらー!お前らがくっつけばいいんじゃないのって言ってるの!!」 「え…?くっ、つく?」 とミオはきょとんとしている。アレンは激しく動揺し、紅茶のカップを落とす。 「俺からみたらお前らほぼカップルだから!!ミオは国王の妻になればいいんじゃないのって思うわけ!!わかる?!」  ユリウスが思いのたけをぶちまける。ミオはしばし呆気にとられていたが、 「私、アレンにふさわしくない。アレンにはもっといい人がいる」 ミオはそう言ってアレンの顔をじっと見つめる。  アレンは弾かれたように立ち上がると 「すまん、すこし抜ける」   と言って、ダイニングから出ていった。
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