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と・く・べ・つ♪9
夏も終わり。毎年と同じように今年もスタジオメンバーとにょんたんずと瑞希先生が俺の家に集まる。今年もみんなで宵宮に行き、火の玉屋を訪れるためだ。
「やった! お揃い!」
風くんが声を上げて水くんが恥ずかしそうに微笑んでいる。今年は風くんと水くんのリクエストにより全員お揃いの浴衣。リクエストしたのが風くんと水くんとあって、浴衣の柄は白地に花火だけど、帯を風と水をあしらったものに束砂さんがデザインしてくれた。大人たちは着替えてから来たけどにょんたんずは俺と母さんが着付けをした。
「なんか、みんなきょうだいになったみたい……」
翡翠が可愛いことを言う。俺はみたいじゃなくて翡翠とは本当のきょうだいだもんねーー♪
「じゃあ行こうか……」
そう言う伊織先生は分かりやすく落ち込んでいる。今年は女児用のアニメキャラ浴衣着れなかっただろうか?
「……どうせお揃いなら私とにょんたんずだけが良かった……」
どっちにしても下らない理由だった。ちなみにそれは全員が許さないからな。
「みんなお揃いもワクワクするよね。ね、瑠璃くん!」
薫蘭風ちゃんが俺の腕に腕を絡めてくる。ちょっと恥ずかしいけど、薫蘭風ちゃんの恋人になって随分経つしすっかり公認だから俺もはしゃいだりしない。
「分かるよ。みんな一緒ってはじめてだもんね!」
なんて大人ぶって返したけど、このメンバーで一番いちゃつく親父と母さんが早速やらかしてる。
「母さんと同じ浴衣なんて私はこの世に生まれてきた理由の一つを今知ったよ!」
「もう! あなたったら!」
……いい年した大人がキャッキャッしている。俺、二人のいちゃつき、いつまで見るんだろう? じいちゃんばあちゃんになっても俺の両親はいちゃつきそうだ。
「瑠璃くん、将来ああいう夫婦になりたいよね」
「あれを……」
薫蘭風ちゃんが怖いことを言う。
「瑠璃お兄ちゃん、今も大して変わらないから」
「何だとーー!?」
翡翠が俺の心を抉ってくる。
「僕は、お父さんお母さんも瑠璃お兄ちゃんと薫蘭風お姉ちゃんも仲良しなら嬉しいな」
「よし! ああなろう!」
俺の心は決まった。可愛い翡翠の頼みを聞かない訳にいかない。
「早く行こうよ。瑠璃お兄ちゃんたち、前置き長いよ」
風くんにたしなめられてしまった。
「そうだね」
てことでやっと出発したけど、宵宮の日はにょたチョコ男子たちがみんな集まって向かうのを知ってしまわれているから、ちょいちょいスマホのカメラで撮られてしまう。この日だけは伊織先生も俺らが写真に撮られるのを許している。普段はそんなことは絶対させないんだけど、今日は仕事を忘れたい日なんだそうだ。
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