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相変わらず良くんや香多くんは愛想を振りまいている。俺ももうプロのモデルなんだけど、この二人には勝てる気しない。
げたんわくんは、メロン抱えているし、はろんさんはらぶちゃんとヴェアくん連れてきてるし、火の玉屋に行く準備をしているメンバーもいる。
火の玉屋とは、その名の通り火の玉を売るのだけど、そこにはろうそくもついてくる。火の玉をつけたろうそくにはそれぞれが最も波長の合うご先祖様が降りてきて、一晩お話できる。ただ、火の玉屋が俺らの街で店を出すのはこの宵宮の日だけで機会は一年一度しかない。だからこそ俺らも気合いが入るんだ。ご先祖様の前で失礼できないじゃん? 失礼しまくってる子孫も何人かいるけど。
「よ! 嬢ちゃん!」
今年は鳥居をくぐった瞬間、火の玉屋のおじさんが声をかけてきた。
「わ! すぐ見つかった! こんな鳥居側はじめてかも!」
「ああ。どうせ嬢ちゃんたち来ると思ったから鳥居側を狙ったんだよ。毎年探しているんだろ?」
「やっぱりおじさん話分かる人だ!」
「お兄さんな! じゃ、今年はそこの陰の薄い二人から行くか!」
今年は大と透かららしい。てか認識が陰薄い人になってるのかよ……。
「こんなこともあるんだ……」
「俺ら、おまけみたいなものだと思ってたのに……」
二人とも自己肯定感低いなぁ。お前らいなきゃ俺らの物語はじまってないのにな。
大と透にろうそくを持たせて、火の玉屋のおじさんは火を点ける。ろうそくから手足が伸びて顔が浮かび出る。
大と透のご先祖様は今年は穏やかな顔をしている。
「あの世から見てもお前らはもう安心だな。いい会社に就職して、それなりに毎日楽しんでおるし。お前らに縁談求めない限り、先祖としてはそれなりに鼻が高い」
「え……。俺ら結婚できないの?」
「マジ?」
ショックを受ける大と透。
「仕事に生きろよ」
とどめのように大と透のご先祖様は笑う。いきなりキツいの来たなぁ。
「さて……次は問題ある方行こうか……」
火の玉屋のおじさんの顔が渋くなる。問題あるメンバーなんて伊織先生しかいないじゃないか。この一年で二千人の女の子泣かした伊織先生しかいないじゃないか。
その予感はビンゴで伊織先生のご先祖様は現れた瞬間伊織先生の鳩尾に一撃喰らわした。
「貴様はぁぁぁ! ろくでもない女たらしの男より女の子泣かすってどういうことだよ! あの世から見ててもエグすぎて見てられんわ!」
伊織先生気絶。なんか昔似たようなの見たなぁ。
監視のアッキー、マッキーは盛大にため息吐いた。監視として機能しているのだろうか?
「ま、気を取り直して」
「今年もご先祖様と踊ろう!」
アッキーとマッキーはご先祖様と踊る選択をした。ご先祖様もノリのいい双子だからお話よりそっちがいいんだろう。
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