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糸との過去 side謙吾
糸は楽しそうにプロフィールを作り上げていく。
プロフィールに貼る写真を自撮りしようとしていたので「俺が撮ろうか? 自撮りじゃない方がいいらしい。本当は自然光のもとで撮った方がいいんだが」などとまた余計なことを言ってしまった。
ついつい登録者向けのマル秘テクニックと称した『「イイネ」のつきやすいプロフィール作り』を伝授してしまう。
大馬鹿者だろう。
【婚活ステーション】の話が出た時点で、運営は俺の会社だというべきだったのに。
糸が誰かと結婚するのか?
俺はそれに耐えられるのか?
◇◇◇
小学校時代から大柄で見た目が厳つかった俺は、周りの人間に怖がられていた。何の気兼ねもなしに喋りかけてくるのは糸くらいのものだった。
そんな糸が特別な存在になったのは小学6年の運動会。俺は毎年の事だが学年縦割り対抗リレーの代表に選ばれていた。
アンカーでバトンが回ってきたときは4人中4位と最下位だったが、一人抜かし、二人抜かし、最後の一人を抜かしてトップに躍り出た。そしてそのままゴール。聖堂館のグラウンドは最高潮に盛り上がった。
走り終わった俺のもとにやってきたのは糸だった。1位の選手にリボンを渡す役割を担っていたらしい。
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