537人が本棚に入れています
本棚に追加
友情復活
謙吾と一夜の過ちを犯してしまったあと、私はすぐにメッセージをブロックした。もう二度と謙吾には会いたくないと思ったからだ。
ちょうど教育実習の準備で忙しく、余計なことを考える暇はなかった。
謙吾もインターンとしてグループ会社で働き始めたと聞いていたから、きっと忙しくしていたのだろう。
再会したのはつい最近のこと。
今年のお盆休みに聖堂館の同級生同士の結婚式があったのだ。私は新婦に、謙吾は新郎に招待されていた。
久しぶりに会った謙吾は、顔の半分を髭が覆う熊男になっていた。びっくりしたなんてもんじゃない。
最悪な別れ方をして、こちらからブロックしたのにもかかわらず、思わず声をかけてしまった。
「ちょっと、どうしたのよその髭面! 熊男みたいじゃない」
「糸……」
「俺も久しぶりに会ってびっくりしたわ。謙吾お前、会社でイエティって呼ばれてんじゃねーの?」
私の問いかけに、参列していた同級生の西田くんも同調してきた。
「周りはもう見慣れている。俺は目つきが悪いからよく似合っているそうだ」
「……それ、褒められてないと思うよ?」
「プハッ……だな。お前、今何してるんだっけ?」
「うちのグループの人材サービス会社を任されている。兄貴たちが面倒がってるところを押し付けられた」
「ああ、なるほど……。けど、登録者やクライアントに怖がられないのか?」
それは私も気になった。
最初のコメントを投稿しよう!