プロローグ 〜6年生の担任です〜

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 小学校6年生は思春期の入り口。生意気盛りだけれど、まだ先生の言うことをちゃんと聞いてくれる純粋な時期でもある。  ちょっとばかし厳しいかもしれないけれど、社会のルールを身につけるためにも規律は守ってもらわなきゃいけない。  でもただペナルティを課すわけじゃない。私はちゃんと子供達に寄り添う姿勢も見せることにしている。  私は天沢糸(あまさわいと)、28歳。現在、聖堂館学園小学校で6年生の担任をしている。  聖堂館学園小学校はカトリックミッションスクールで、幼稚園から高校までの一貫教育を行っている。  関西では良家の子女が通う学校として人気が高い。  私自身もこの学校の出身で、教師になって6年目になる。 「相変わらず見事なやり取りだねー」 「優先生……見てたんですか?」 「見てました。いやー、あの井田君でも天沢先生の前では形無しだね」    井田君は今の6年生の中ではジャイアン的存在だ。でもいくらジャイアンとはいえ、こちらは大人。しかも担任。上下関係ははっきりしないと。   「生意気盛りですからねー。でも可愛いもんです」 「アハハハ、さすがさすが。6学年の先生方も天沢先生を頼りにしているみたいだね」 「えぇ? まさか。私が一番下ですよ?」    6学年の担任は3名。40代後半の学年主任兼A組担任である男性教諭と、30代後半のC組担任である男性教諭だ。どちらもベテラン中のベテラン。  6学年を任されるということは、何があっても動じず、子供たちをピシッと導く力がなくてはならない。私なんて今回で6学年は2回目のまだまだヒヨコだ。
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