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顔合わせ
「糸ちゃんお久しぶりね!」
「ご無沙汰してます。今日は突然お時間をいただいてすみません」
「いいのよー。こんな嬉しい話はないんだから!」
久しぶりに会った六車のご両親は相変わらず何もかもが大きかった。190㎝の息子のご両親だ。当たり前にお二人ともでかい。そして声も。
「母さん、個室とはいえ音量を下げてくれ」
どちらかというと寡黙なお義父さんに似た謙吾が苦言を呈する。
「あら、ごめんなさい」
私や私の両親との久しぶりの再会、二人の結婚話で興奮されているのだろう。そのお気持ちは嬉しいので、私は別に構わないんだけどね。
今朝連絡したばかりだというのに、どちらの両親もすぐに駆けつけてくれたのは有り難いことだった。
六車のお義父さんなんて、会計事務所を営んでいるだけのうちの父と違ってお忙しいだろうに。
「最近は息子達に事業を任せているから、孫の相手ばかりなんですよ」
「いいですね。お孫さん、おいくつなんですか?」
うちの両親が羨ましそうに聞いている。
「長男の方は小学4年と2年。次男の方は小学1年。全員聖堂館に通っていますよ」
そうそう。六車一族は聖堂館でも有名だ。
全員男子で、各学年で抜きん出て体が大きい。
「まぁ、糸は受け持っていないの?」
「私は今6年生の担任だから」
実は私、新米の頃から低学年を受け持ったことがない。
しっかり者と見られるのは別にいいのだが、いつか可愛い一年生を受け持ってみたいと思っているのよねー。
「糸ちゃん、相変わらずしっかりしてるのねー! この子ボーッとした熊みたいな子だから、糸ちゃんがお嫁さんになってくれたら安心だわ。あのむさ苦しい髭もやっと剃ったのね! ほんと、目つきも悪いし、誰に似てこんなに図体がでかいのやら」
推定175㎝くらい? そしてつり目気味のお義母さん。
誰の目にもあなたにそっくりなんですけど……と皆心で思ったが、声に出して言う者はいなかった。
でも、昔から朗らかで面倒見が良く、大好きな方だ。
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