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僕は思い切って椅子を立ち上がり、一成に宣言した。
「決めたんだ。僕は、夏休み中に『俺デビュー』する」
「爽太、なんだそれは」
「だから。自分の事を『僕』と呼ぶのをやめて『俺』にしようと思う」
昼下がりのファーストフード店へ呼び出され、一成は何事かと思ったろう。だけど僕は大いに真剣だ。椅子に座る一成の目をじっと見つめた。高校生になっても背の低い僕が、見下ろしたって威圧感はない。
幼馴染とはいえ、理解してもらえるだろうか。
「生まれたときから俺で通してきた一成には分からないかもしれない。うまくいえないけど、自分自身を僕と表現することが窮屈になってきたんだ」
クーラーのきいた客席では、学生の声がはしゃいでいる。その中で、僕だけ場違いに深刻だった。
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