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僕のおごったドリンクを一気に飲むと、一成が神妙な顔で身を乗り出してきた。
「いじめでもあったなら、加勢するぞ。違う高校になって離れたって、親友だからな」
正義感あふれる一成の顔が、虎のようにきりっと引き締まった。
「い、いや、そういうんじゃないよ。高校生活は順調だよ。憧れだった漫研に入ったし、新しいマンガも描き始めたし」
僕は慌てて首を振った。焦って落ち着きのない自分の姿が、夏の光を受けた窓ガラスに映る。
「ほら、この眼鏡のせいか、自分で言うのも何だけど暗い印象だろ。爽太って名前と、やけにちぐはぐだ。高校に入ってからも、何度も『お前誰だっけ』と言われたよ」
「でも目元口元は優しいかな。その辺、人当たりがよさげで爽太は得だと思うぞ」
「フォローはありがたいけど、この下がり眉でいっそう気弱に見えるって。一成に比べたら、モブというくらいに特徴がなくて困るんだ」
一成は椅子をガタリと動かして、立ち上がった。
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