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二人でメールを確認し、心から喜び合う。
さっそくデートの時の服装を決め、髪をセットし、化粧も軽くする。
濃い化粧をしてしまうと、逆に引かれててしまう可能性がある為、ナチュラルが一番という友恵のアドバイスだった。
春なので少し肌寒い。肌の露出も控えた方がいいだろうということで、下はひざ丈くらいのスカート。上は、花柄の長袖シャツ。
カーディガンを羽織り、髪はハーフアップ。白いリボンを付けて、準備は出来た。
デートに出かける四季を友恵は、いつもと変わらない笑顔を浮かべて見送った。
こんなに喜んでくれていた友恵が、まさか自分を裏切るなんて思っていなかった四季は、憎悪、怒り、悲しみ……。
どの感情なのか、それともすべてか。
半年付き合った彼から「君の親友が好きになった」と言われ振られてしまい、負の感情に押し潰されそうになる。
本当に、突然だった。
何の前振りもなく、なにも違和感はなかった。
なにも、気づかなかった。
振られた次の日、友恵は結城と共に過ごしていた。
楽しそうに笑っていた。
頬に手を添えられ、友恵の顔は赤く染まる。
恋をしている顔を、浮かべていた。
昨日までは、自分がそこの立ち位置だった。
自分が、その手に触れていた。
自分が、彼と一番近かった。
なんで、そこまで急接近したのか。
今までそんな素振りすら見せなかったのに。
見ているのも辛い。でも、気になる。
なぜ、振られてしまったのか。なんで、親友だと思っていた友恵に取られたのか。
そんな時、友恵の話をしているクラスメイトの話が耳にはいった。
「ねぇ、友達の彼氏を奪っておいて、普通あそこまで堂々とイチャイチャ出来るもの?」
「普通出来ないよね。でも、奪われても仕方がないよねぇ」
「噂が本当なら、ねぇ」
そんな話が聞こえ、四季は目を微かに開く。
――――奪われても仕方がない?
なぜ、そんな事を言われないといけないのか分からない。
自分は、何もしていないのに。
そんな気持ちに駆られ、感情のままに席を立ちあがろうとしたが、まだ話しは続いており、動きを止めた。
「でも、まだ一日二日だよね? なんであんなに距離が近くなれるんだろう。もしかして、白井君、浮気していたのかなぁ?」
「あり得るねぇ~。結構、女癖悪いっていう噂だし。もしかしたら、浮気中にやることやっていたんじゃない?」
「うわぁ。げすいねぇ」
「ねぇ~?」
噂話を楽しむ二人は、四季が聞いていたことに気づかない。
そのまま話題は、違う話に切り替わる。
立ち上がろうとした四季の手は、机の上から膝に戻る。
――――そっか、私は、弄ばれていたんだ。友恵も、私の彼氏を寝取ったんだ。だから、あんなにも仲睦まじいんだ。
そう思うと、心臓が締め付けられ息が苦しくなる。
体が熱くなる感覚が湧き上がり、恨みで充血した目を二人に向けた。
――――許せない。
そんな感情のまま授業をさぼり、ふらふらと当てもなく歩いていると、陰影累と名乗る男性と出会った。
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