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「俺も、体を動かしたいと思っていたし、ちょうどいいわ」
言いながら目を閉じる。
右の手のひらを下に向けると、累の影が動き出した。
ずっと近くにいた日本人形のクグツは、巻き込まれないように累から離れた。
「んじゃ、楽しもうか。心躍る喧嘩をよぉ!!」
次に目を開けた瞬間、右目は赤く染まっていた。
動き出していた影は浮き上がり、累の右手を込み、弾けるように霧散する。
累の右手には、刀のような形を作り出した影が握られていた。
影刀と呼ばれる刀を構え、累は地面を蹴り、駆けだした。
攻撃を防ぐため、男性は鉄パイプを横に構える。
振り上げた影刀は、ガキンと音を立て防がれた。
「力は強いらしいなぁ」
「舐めてんじゃねぇぞ、この、クソガキがぁぁぁぁあ!!!」
「おっと??」
鉄パイプで影刀を押し返した。
累の身体は簡単に吹っ飛び、空中を舞う。
地面に足を突ける前に追撃をしようと、男性は鉄パイプを振り上げた。
「へぇ、面白いな」
空中で身動き取れない中、楽しそうに笑う。
余裕を崩さない累に、男性の鉄パイプが襲いかかった。
影刀を縦にし、横からの鉄パイプを防ぐ。
だが、力が強いため、またしても吹っ飛ばされた。
今度はすぐに足を付け、構え直すが追撃は止まらない。
鉄パイプを振り回し、累を襲う。
だが、累は男性を見て、笑った。
「――――横腹、がら空きだぞ」
鉄パイプの隙間を縫い、懐に入った累は、影刀を横一線に迷いなく振りかざす。
鮮血が舞い上がり、男性は唖然としたような表情を浮かべた。
「──えっ」
「悪いが、これ以上時間をかける気はねぇんだよ」
地面にグシャと落ちた男性は、斬られた横腹を抑える。
悔し気に見上げ、累を睨む。
「睨んでも、意味はねぇよ。まぁ、命乞いしても、同じだけどな」
言いながら刀を振り上げる累を見て、男性の表情は顔面蒼白。怯えたように声を震わせ、累を止めた。
「ま、待て! もうおめぇに何も言わねぇ。言わねぇから!!」
「この世界では、喧嘩を吹っ掛け、買えば戦闘開始。命乞いは無意味、諦めろ」
言うと、地面が赤く染まった。
男性の体は、累の影刀により、真っ二つ。
地面に転がり、白目をむき動かなくなった。
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