2-2 裏の世界

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「俺も、体を動かしたいと思っていたし、ちょうどいいわ」  言いながら目を閉じる。  右の手のひらを下に向けると、累の影が動き出した。  ずっと近くにいた日本人形のクグツは、巻き込まれないように累から離れた。 「んじゃ、楽しもうか。心躍る喧嘩(殺し合い)をよぉ!!」  次に目を開けた瞬間、右目は赤く染まっていた。  動き出していた影は浮き上がり、累の右手を込み、弾けるように霧散する。  累の右手には、刀のような形を作り出した影が握られていた。  影刀(いんとう)と呼ばれる刀を構え、累は地面を蹴り、駆けだした。  攻撃を防ぐため、男性は鉄パイプを横に構える。  振り上げた影刀は、ガキンと音を立て防がれた。 「力は強いらしいなぁ」 「舐めてんじゃねぇぞ、この、クソガキがぁぁぁぁあ!!!」 「おっと??」  鉄パイプで影刀を押し返した。  累の身体は簡単に吹っ飛び、空中を舞う。  地面に足を突ける前に追撃をしようと、男性は鉄パイプを振り上げた。 「へぇ、面白いな」  空中で身動き取れない中、楽しそうに笑う。  余裕を崩さない累に、男性の鉄パイプが襲いかかった。  影刀を縦にし、横からの鉄パイプを防ぐ。  だが、力が強いため、またしても吹っ飛ばされた。  今度はすぐに足を付け、構え直すが追撃は止まらない。  鉄パイプを振り回し、累を襲う。  だが、累は男性を見て、笑った。 「――――横腹、がら空きだぞ」  鉄パイプの隙間を縫い、懐に入った累は、影刀を横一線に迷いなく振りかざす。  鮮血が舞い上がり、男性は唖然としたような表情を浮かべた。 「──えっ」 「悪いが、これ以上時間をかける気はねぇんだよ」  地面にグシャと落ちた男性は、斬られた横腹を抑える。  悔し気に見上げ、累を睨む。 「睨んでも、意味はねぇよ。まぁ、命乞いしても、同じだけどな」  言いながら刀を振り上げる累を見て、男性の表情は顔面蒼白。怯えたように声を震わせ、累を止めた。 「ま、待て! もうおめぇに何も言わねぇ。言わねぇから!!」 「この世界では、喧嘩を吹っ掛け、買えば戦闘開始。命乞いは無意味、諦めろ」  言うと、地面が赤く染まった。  男性の体は、累の影刀により、真っ二つ。  地面に転がり、白目をむき動かなくなった。
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