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むしろ彼女に触れられた時の頭の芯がしびれるような感覚やのぼせたようにいう事を聞かなくなる身体があまりに不自然で不気味な感じ。
何かがおかしい。おかしすぎる。
汚れた制服を脱いで新しいものに着替えると、エステルはもう用はないとばかりにさっさと帰って行った。
いや、一緒に下町に行って何か買ってほしいと遠回しに言われたのだが、騎士団の方で仕事が入っていると断ると、急に機嫌を損ねて足音も荒々しくドタドタと帰って行ったのだ。
その「勇ましい」を通り越して、いっそ粗暴と呼ぶのがふさわしい後ろ姿を見送りつつ、僕は今までのエステルの言動を思い起こした。
ことあるごとに身分や財力のある令息にすり寄り、むやみやたらと身体に触れたがる。
猫なで声で甘えては、やれ宝石やドレスが欲しい、芝居を見に行きたいとねだってばかり。
「まるで、タチの悪い街娼か美人局みたいじゃないか……」
今までさんざん訴えてきていたイジメについても、存在そのものがあやしいと思う。
訴えのほとんどは、さっきのような自演だろう。
もし誰かに何かされていたとしても、エステルが被害者というよりは、さっきのように意味不明の言いがかりをつけてしつこく絡んだ結果、やり返されただけかもしれない。
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