ピンク頭と物的証拠

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ピンク頭と物的証拠

 エステルによる、アハシュロス公女を冤罪に陥れる計画を阻止するには、記録球を仕掛けて物的証拠を残すのが一番だと思う。問題は記録球の入手元と仕掛ける場所。  貴重な魔道具である記録球はお金さえ出せば手に入るようなものじゃない。そんなものを複数入手したという事がエステルに知られれば、警戒されて尻尾を出さなくなるかもしれない。  手に入る数も限られるだろうから、確実に能率よく証拠を押さえられる場所と時間に仕掛けなきゃ。  翌朝、教室に向かう途中でそんな事をつらつらと考えながら歩いていると、廊下の曲がり角で誰かとぶつかりそうになった。 「どうしたヴォーレ、また考え事か? ぼーっとしていると危ないぞ」  夜空のような濃藍色の髪と銀縁眼鏡に蒼い瞳。知らない人が見たら怒っているのかと誤解しそうな無表情。  僕と同じく、クセルクセス殿下の側近候補のコノシェンツァ・スキエンティア侯爵令息だ。 「余計なお世話! ちょっと捜査について段取りを考えてただけだよ」  思わずムッとして反射的に言い返すと「気をつけろよ、お前は危なっかしいからな」と呆れたように返された。  ちょっと納得がいかない。  殿下の側近候補の中では彼と僕だけが成績上位者の在席する政経科なので、他の側近候補……という名のお目付け役からは浮いてしまっている。まったく、王族のくせに成績が悪すぎて一般教養科にしか入れないなんて前代未聞だよ。  しかも他の連中が殿下の言動に何も言わないせいで、二人で「少しは勉強しましょう」とか、「お忍びで街を出歩くのはほどほどに」とか再三にわたって忠告する羽目に。  おかげで二人とも殿下にはすっかり嫌われちゃった。  そのかわり、いつの間にかこういう気安いやりとりもするようになり、今では愛称で呼び合う間柄なんだけどね。
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