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「それで、コニーはどうしたの? 君が人とぶつかりそうになるなんて珍しい」
お互いに直前まで気が付かなかったということは、考え事に没頭していたのは僕だけじゃないってことだよね?
「実はエステルのことで考えごとをしていてな……」
「何かあったの?」
「殿下が卒業記念パーティーでアハシュロス公女の悪事を糾弾すると言い出したんだ。しかし、エステルの証言だけでは信ぴょう性に欠けるだろう?」
「当たり前だよ。というか、パーティーで公女をつるし上げしちゃうの? まず過ぎない?」
ちょうど相談したかった話をコニーの方から言い出してくれた。
正直すごくありがたいので、そのまま話に乗っかる事にする。
「俺もそう申し上げたんだが、殿下がどうしてもと聞かなくてな。エステルも絶対に謝ってもらうと息巻いてるし」
「でも、証拠は何もないんだよね?」
「ああ、そうなんだ。かといって物的証拠を押さえようと言うと、エステルが事を荒立てたくないと嫌がって泣きわめくし」
どうやら殿下が物的証拠をおさえさせようとしているのは知らないみたいだから、いったん伏せておいた方が良いかな?
「いや、どう考えても警邏に訴えるよりそっちの方が間違いなく荒っぽいと思うけど」
「そうだよな。事を荒立てたくないなら、物的証拠をおさえて被害を届けるなり裁判で訴えるなりした方が穏便に済むはずだが……エステルはどうしても嫌だ、と言うんだ」
僕が疑問をさしはさむと、コニーも我が意を得たりとばかりに頷いた。
「そう言えば、前にもそんなこと言ってた気がするね」
「そうか? とにかく、エステルは卒業記念パーティーでみんなの前で謝ってもらえばそれで良いのだと。その方が間違いなく事が大きくなるといくら言っても聞く耳持たん。いささか不自然じゃないか?」
さすがコニー、未来の宰相候補。僕が何も言わなくても彼女のおかしさに気が付いていたんだ。
……いや、捜査のプロであるはずの僕がつい昨日まで気づいてなかったのが恥ずかしい話なんだけど。
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