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「それじゃ、エステルに内緒で証拠を集めたら? 何かされてると言ってた場所に記録球を仕掛けて録画しておくとか」
凹んでいても始まらない。僕はさっきの考えをコニーにもちかけることにした。
「ああ、それはいいな。イジメが事実にせよエステルの勘違いにせよ、その場の映像が残っていれば誰の目にも事実が明らかになる」
「物的証拠さえあれば、僕が上司にかけあって警邏隊で捜査できるからさ。とにかくパーティーで騒ぎを起こすのは避けたいよね」
ここぞとばかりに同意を求めると、「当然だ」とうなずいてくれた。
「6年間、この王都の治安維持の任に就いているお前から見ても、やはりまずいと思うか?」
「うん、当然だよ。エステルは腹いせにアハシュロス公女に大勢の人の前で恥をかかせたいだけで、その結果がどうなるかまでは考えてないんだろうけど……公女の母上ってダルマチア王妃の従姉でしょ? パーティーで晒し者にしたら、下手すると国際問題だよ?」
「ああ、一歩間違うと戦争だな」
「うん。最悪の場合、また辺境で人が死ぬことになるよ」
ふと師匠と兄弟子の最期の姿が脳裏をよぎって、暗い気持ちになる。
「ダルマチアとはよく揉めているから、付け入られる隙は作りたくない。記録球は俺の方で手配するから、仕掛けるのを手伝ってくれないか?」
昔の紛争のことを思い出していると、コニーが記録球の手配を引き受けてくれた。
願ってもない幸運だ。
「もちろん。殿下の同級生になっちゃったせいで護衛なんかやらされてるけど、僕はもともと犯罪捜査が本分だもの。そういうのは任せてよ」
ありがたい、これでエステルの悪事の証拠をおさえられる。
まだ彼女に惑わされているであろうコニーには申し訳なく思いつつも、僕は満面の笑みで応えた。
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