ピンク頭と物的証拠

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「それで、どこにしかける?」  眼鏡の縁をおさえてコニーが僕に訊いてくる。  いくら彼が侯爵家の伝手を使って手配してくれるとは言え、記録球の数には限りがある。能率よく証拠がおさえられそうな場所にしかけなきゃ。 「エステルはどこで何されたって言ってたっけ?」 「教科書やノートを破かれたとか、ダンス授業用のドレスを破かれたとか」  なんか破かれてばっかりだな。  未来の王妃であるアハシュロス公女がする嫌がらせにしては、あまりにしょぼいし、ワンパターンすぎる。 「大ホールに向かう階段で突き落とされそうになったとも言ってたね」  本当なら殺人未遂。事実ならきちんと捜査すべきだと言ったんだけど断られた。  今思えば嘘だとバレればかえって自分の首絞めるからなんだろう。 「それじゃ教室と更衣室かな?あと大ホール前の階段」 「女子更衣室に入るのか? 俺たちが変質者扱いされないだろうか」  ……たしかに。王都の治安を守る警邏(けいら)騎士として、ノゾキの変態疑惑をこうむるのは絶対にごめんだ。 「エステルの友達に協力してもらうとか? 内容もその人に確認してもらえばノゾキ疑惑は回避できるんじゃないかな?」 「そうしてもらえれば何よりだが、だれか心当たりはいるか?公平で信用できる人物でないと、せっかくの証拠を握りつぶされるかもしれん」 「大丈夫、心当たりあるから。オピニオーネ・パブリカ伯爵令嬢なんてどう?よくエステルと一緒にいるし、イジメの話聞いて『許せませんわ。エステルさんはわたくしが守ります』とか言ってたし」 「彼女なら適任だな。エステルのためにも他言は無用だとよくよく念を押したうえで頼んでみてくれないか?」 「おっけ。任せといて」  思いのほかうまくいきそう。僕はコニーと別れてからにんまりとした。
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