ピンク頭と悪役令嬢

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ピンク頭と悪役令嬢

 騎士として警邏(けいら)部隊に勤務しながら貴族の子弟が通う王立学園の最終学年に在籍する僕、ヴィゴーレ・ポテスタースは卒業を目前にした忙しい時期にこの国の王太子であるクセルクセス殿下に呼び出された。  そこで「平民育ちの編入生であるエステル・クリシュナン男爵令嬢へのいじめの証拠集め」なる厄介ごとを命じられてしまったのだが……  僕は勤務を続けながらの通学を認めてもらう代わりに、学園長からの色々な「お願い」を聞かなければならない立場だ。  そして殿下のお世話もエステルのサポートも、元々の「学園長からのお願い」のうち。  本当にエステルに対して度を越したいじめがあるならば、それに対処するのも僕の仕事のうちだろう。ならばさっさと片づけてしまわねば。    やはり嫌がらせされそうな場所に魔術をこめた記録球をしかけて映像を録画しておくのが一番手っ取り早いと思うが……記録球は貴重で高価なものだ。  僕の薄給ではそうそう何個も用意できそうにないし、そもそも作り手の少ない記録球はお金を出せば誰でもどこでも換えると言うものでもない。  殿下はそういった経費や道具の手配なんて考えてもみないだろうし……さて、どうしたものか。    そんな事をつらつら考えながら教室に戻ると、もう夕方だ。今日は夜の巡回勤務が入っている。  まだ時間に余裕はあるが、たまには早めに行って訓練には参加したいな……と思い、急いで校舎を出た。
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