ピンク頭と悪役令嬢

3/3
前へ
/43ページ
次へ
 正直、現場をこの目で見るまでは彼女がエステルへの嫌がらせをしているとは思っていなかった。  彼女は王妃教育や公務で多忙な上に学園でも成績が良い。  となれば、多忙な公務の合間に学業にも励まねばならないので、下らない嫌がらせに血道を上げていられるほど暇なはずがない。  「自分でやらずに取り巻きに指示を出している」なんて見方もあるにはあるが、彼女と親しくしている生徒は同じ政経クラスのごく一握りにすぎない。みんな揃って成績は良いので、やはりつまらない嫌がらせに時間を割けるほど暇な人間はいないのだ。  アハシュロス公爵家の権力に取り入りたい人間もいるようだが、そういう生徒は公女がまともに相手にせず、軽蔑しきったどこまでも冷たい視線でねめつければいつの間にやら去っていく。  だから、嫌がらせはエステルの事を快く思わない一般教養科の生徒が勝手に行いつつ、アハシュロス公女が疑われるように仕向けているのだとばかり思っていたのだ。  しかし、こんな人目につかない場所にこそこそとエステル一人を呼び出すとは……やはり嫌がらせをしていたのはアハシュロス公女なのだろうか?  幸いなことに、木々が邪魔をして二人はまだ僕に気づいていない。のぞき見はあまり良い趣味とは言えないが、少し様子を見る事にしよう。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加