ピンク頭の男爵令嬢

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ピンク頭の男爵令嬢

ストロベリーブロンドのふわっふわの髪は撫で心地がよくて、いつまでも触っていたくなる。ハニーブラウンの瞳は零れ落ちそうに大きくて、キラキラと輝いている。  クリシュナン男爵令嬢として王立高等学園の最終学年に転入してきた彼女は、半年前に母親が亡くなるまでは平民として育っていたせいか、立ち居振る舞いは全く洗練されておらず、それどころか、ごく基本的なマナーやルールすら知らなかったりする。  しかし、貴族の令嬢にはない天真爛漫な明るさや無邪気さにはいつも不思議と癒される気持ちになる。  いつも元気で一生懸命で、僕の話はなんでも感心して聞いてくれる。結果論ではなく、僕の努力や気持ちを評価して「すごいね」って認めてくれる。  そんな彼女だからだろうか。  恋愛と言うものにとても消極的な僕も、なぜか彼女に対しては何でも話したくなってしまうし、何があっても守ってあげたいと思ってしまう。  もっとも、何があっても守りたいと思っているのはどうやら僕だけではないらしく、王太子であるクセルクセス殿下や、その側近候補のみんなも彼女に夢中のようだ。  みんな揃ってこんなに強烈に惹きつけられるなんて、まるで何かの魔法にでもかかっているようだと思うが、この世界で人の意識を左右するような魔法をかけるのはかなり難しい。  治癒魔法や身体強化、精神操作といった人間に直接影響を及ぼす身体操作魔法は、魔法や人体に関する正確な知識や魔力操作技術など、必要なものが極めて多く、この国でも満足に使える人間は両手の数に届くかどうか。  卓越した使い手でも、魔法で誰かにむりやり好意を持たせようとしても相手の精神を破壊するのが関の山で、望むような効果は得られることはまずあり得ない。  おとぎ話に出てくる『魅了魔法』なんていうものは、少なくとも人間が扱うのは非現実的なんだ。    だから、僕は彼女に恋をしているのかもしれない、なんて呑気な事を思っていた。彼女のあの言葉を聞くまでは。
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