帰る方向が……一緒?!

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帰る方向が……一緒?!

 薙はいつものようにバイトの時間になると起きてコンビニのバイトに向かう。  夜の十時位は人は入って来るのだが、十二時を回る頃には人は殆ど来ない時間になるようで、掃除やらと雑用的な仕事を始める薙。  そしていつもの夜中の三時頃になるとあのホスト風の客が来るのだ。  またいつものように夜食を買いに来たのか、暫く店内を歩き品物を選ぶと、その客がレジへと来て、再び薙はその客に話しかけられるのだった。 「いつも何時に仕事が終わるの?」 「……へ? あ、いつも六時には終わりますけど……」  確かに昨日もこのホスト風の客は薙に声を掛けて来たのだが、まさか今日も声を掛けれるとは思ってはいなかったのであろう。 だから薙の方はワンテンポ遅れて答えたのだから。  だが、何故、そのホスト風の客は薙のバイトが終わる時間を聞いてきたのであろうか。  それはまだ分からないのだが、またその客は「ふーん」とだけ言って店を出て行ってしまう。  それからその客は毎朝六時位に来て、朝食なのか夜食なのか品物を買うと、薙の前を歩いて自分の家へと帰って行く。  その客の家は薙が働いているコンビニからそう遠くはない。 寧ろ方角の方は、薙の家の方面で、薙はそのホスト風の男性の後に付いて家に帰宅していた。  やはりホストでもやっているのであろうか。 その男性は薙の家の一歩手前にあるオートロック付きの高層マンションへと、入って行く姿を見ていたのだから。 そして薙は、そのホストらしきコンビニの常連客の後を見る毎日を送っていたのである。 「やっぱり、いい家に住んでるんだなぁ」  と思いながら薙は溜め息をつき、その男性が入って行ったマンションを見上げる。  それから一週間位過ぎた辺りだろうか。 薙は仕事が終わるといつものようにその男性の後を付いて歩いていた。 そう薙からしてみたら、その男性と家に帰る方角が一緒だったっていうだけで、特に付いて歩いていたという意識はなかったのだが、その男性は突然足を止め薙がいる方に足を向けたのだった。 「な、いつも俺の後付いて来てるみたいだけど……俺に気があるのか?」  その質問に目を丸くしたのは薙だ。 「はぁ!? そんな訳ないでしょ!? 違う! 違う! 誤解だよ! 僕が住んでるアパートもこっちの方なんだからね!」 「何だ……そういうことか……」  そう何故だか残念そうに答えるその男性。 「ま、いーや……」とだけ答えると、またいつものように自分が住んでいるマンションへと入って行ってしまう。
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