六月病

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「あいつ電車で通学してる奴らの気持ちがわかんないんだよ。車で来てるから」  隣で凜が一限の教授の文句を延々と言っている。僕はそれを真面目には聞かずに、教室へと向かった。  言うて僕もあと一回でこの授業は落単だ。凜が言ったように今月は遅延が多く、遅刻を繰り返していた。何回か通学中に人身事故にも遭遇したため、それで大幅に遅刻したこともあった。結果、理解のない教授によって欠席扱いになり、あと一回遅刻をしたら一発アウトの窮地に立たされていた。  教室に入るなり、遅延証明書を渡すが、特に見向きもされずに後方の席に座らされる。他にも人身事故の影響で遅刻した生徒がいたが、同じ対応を取られていた。 「就活の為にも落としたくは無いんだよなぁ……」  よく就活にGPAは関係ないと聞くが、僕が行きたい企業はESでGPAを聞いてくるらしい。少しでもGPAを高く留めておきたい僕は、遅刻だけで授業なんて落としてられなかった。 「もう俺いいわ。どうせ来週も遅延だろうし」  凜が諦めた口調で言う。  あと一回でも遅刻したら終わり。遅延が起きたら一発アウトだ。遅延が起きるのは仕方がないが、せめて学期が終わるまでのこの曜日の通学中には絶対に遅延が起きてほしくない。  僕はタブレットに板書を書き込んだ。そう願っても遅延は起きるものなんだよな、とスマートフォンに来た別路線の遅延通知を見て思う。
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