六月病

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◇  それから二週間後。人身事故があった翌週は何事もなく無事到着できた。その前後の曜日は相変わらず色んな理由で遅延していたが、自分には何の影響も無かったのでオールOKだ。  今日もあの授業の日がやってきた。いつも通り身支度を整えて、家を出る。朝ご飯は大学近くのコンビニで調達するから家では食べない。駅に到着し、やってきた電車に乗る。よし順調だ。  僕はスマートフォンで好きな動画配信者の動画を見ながら電車に揺られた。満員電車にも大学に二年通っていたら慣れた。今なら多分寝れるだろう。僕はくすっと笑いながら動画をまじまじと見つめる。 『緊急停車します』  突然電車が止まった。僕はビックリしてスマートフォンから目を離す。周りの乗客たちも何事かと顔をあげていた。僕はブルートゥースイヤホンを取って車内アナウンスを待った。まだ大学の最寄り駅からは程遠い場所だ。止まった理由によっては遅刻である。 『えーお客様にご案内いたします。この先高円寺駅にて人身事故が発生いたしました。ただいまこの電車に影響があるかどうかの調査を行っております。大変ご迷惑をおかけしますが、電車から降りずにそのままお待ちください。繰り返します──』  人身事故のアナウンスがあった瞬間、辺りの乗客たちがみな「またかよ」と呟き始める。一人はSNSで人身事故について調べ、もう一人は周りに迷惑が掛からないように小声で会社に電話をしている。  僕は大きな溜息を吐いた。これでは遅刻確定で、僕はあの授業の単位を取ることができない。
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