六月病

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 ハッとなった。今、なんて言った? 自分が仕出かしたことに気が付いて、頭を抱える。今、僕は失われた命に対しての批判をした。あれだけ嫌っていたことを、今してしまったのだ。これではSNSで批判している奴らと同等である。  僕はもう一度溜息を吐いた。この溜息は自分自身に向けられたものである。 「最低だ、僕……」  耐えられなくなって、自らの命を食べてしまった人間に対しての批判。これはあってはならないことである。本人は望んでその消え方をしたわけではない。それなのに僕は、どうしてそんな言葉を言ってしまったのだろう。  人は窮地に立たされると本性が出ると言う。あれだけ凜が人身事故に対してネガティブなことを言っていたのを見下していたのに、今の僕は凜と同じだ。本当の僕は、凜と同じリアクションをしているのだ。心の奥底で、人身事故に対して嫌な気持ちを抱いている。  そもそも凜の意見を「やめなよ」とかって言わなかった時点で、僕も少しは同意しているということになるのではないか。  残された「あと一回」の重みが、僕を曝け出してしまった。嫌な僕の部分を。知りたくなかった。見たくなかった。  僕は天井を見上げた。ベッドから落ちてできた痣がまだ少し痛む。心もどこか痛んでいるような気がした。 (了)
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