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侵入
エルギン邸に向かう馬車の中で、メイジーはブルネットのウィッグを外し、束ねていた金髪を解いた。
メイジーは屋敷の近くで馬車を降り、使用人の通用門に回ったが、ノッカーを鳴らすときに、追い返されたらどうしようと酷く緊張した。
今夜は仮装パーティーでアーロンたちが夜中に帰るのを迎えるためか、すぐにフットマンが顔を出した。
知っている顔にほっとして、執事のギブソンを呼んでくれるように頼む。 メイジーが乱れた髪と旅芸人の姿で訪ねたことで、よほどのことが起きたと思ったのだろう。フットマンは大慌てで執事を呼んできた。
「お嬢様! いったいどうされたのですかか」
「お願い。叔父が帰ってくる前に、書斎で探し物をしたいの。お父様と約束していたことがあって、私の持ち出した荷物には、入ってなかったのよ」
「‥‥お通しさしたいのは山々ですが、もし伯爵に見つかれば、私だけでなく年若いフットマンも紹介状無しで首になるでしょう。そうなれば次の仕事を得られません」
「私のせいで失業したら、今の勤め先にお願いしてあなたたちの職を斡旋してもらうわ。それまで私が稼いだお金で、生活できるようにするから」
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