プロローグ

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「ああ、そういえば、以前家でクリスマスパーティーを開いたときに、私たちの侍女がザラの機嫌を損ねて、酷くねちねちと文句を言われていたわね。それでも許されずに、熱い紅茶をかけられて泣いていたわ。本当に執拗で残酷な人。数か月しか誕生日が違わないなんて思えないわ。もし、ルビーになりたくなったら、なるべくザラとは関わらないように気をつけなくちゃ」  当分ザラに会うことは無いし、ルビーを演じる機会なんて巡ってきそうもないけれど、とメイジーが苦笑したとき、ドアをノックする音が聞こえた。  ルビーがドアを開けると、女生徒を監督するロッテンマイアー婦人が立っていて、グレース学院長のスミスが二人を呼んでいるという。ルビー一人が呼ばれるなら、活発過ぎる行動を諫めるためだと想像がつくが、二人に関係することとなると、家のことだろうかとメイジーは不安になった。  傍らに立つルビーは平然と分かりましたと答えたが、双子のメイジーにはルビーが緊張しているのが分かる。一瞬視線を交わした後、二人はロッテンマイアー婦人について応接室へと向かった。  扉を開けると、貴族の館かと見間違うほどのロココ調の家具や調度品が置かれた部屋が現れた。二年前にセント・グレース学院に入学するための面接を受けたのがこの部屋だ。  ロッテンマイアー婦人は奥のソファーに座ったスミス校長に頭を下げると、メイジーとルビーを置いて出て行った。
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