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必死で頼み込むメイジーに、ギブソンは目を潤ませて何度も瞬きをした。
「貴族のお嬢様がそんなご苦労を‥‥。分かりました。なるべく早く探してください。もし伯爵が戻りましたら、足止めする努力はいたします」
「ありがとう。ギブソン。いえ、ギブソンさん。お仕事を斡旋する約束は必ず守るから」
「ギブソンで結構ですよ。これは独り言ですが、書斎に入って右側の書庫の窓際の本棚は、手前に引けるそうです。最近作られた小部屋を、偶然見たメイドの話では、私どもの給金を下げただけでは買えなさそうな、絵画や金細工や陶器が置いてあったとか」
「ギブソン、感謝します」
メイジーは書斎へと走って行った。ギブソンが教えてくれた棚へと直行する。
果たして、書棚はドアのように本当に開いた。
「何この宝の山は。まるで本で読んだ海賊船のお宝部屋みたい。きっと騙し取った大金を一気に銀行に預けたら、出どころを疑われるから、資産に換えて保管しようとしたんだわ。一体どこから探せばいいのかしら」
小部屋を見渡したメイジーは、隅の壁にかかるアーロンの自画像を見つけた。
最初はこの宝の山々に君臨する王のっもりで飾ったのかと思い、踏み潰してやりたくなった。
でも、ふと違和感を覚える。どうして堂々と真ん中に飾らないのだろうと。
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