最終話 旅立ち

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「俺はなんて事はない。高校を卒業して海上自衛隊に入隊。自衛隊生活は性に合っていたな。七年過ごしたところで、どういうわけか組織からスカウトされたんだ。で、俺も三年の訓練を受けた。訓練期間は、勲とは入れ替わりだったんだな……。その後組に入る計画だったが、コネ作りに苦労して一年もかかっちまった」 「で、源治、組に入った目的は?」 「組員の監視と情報収集だよ。でもまさか、お前が同志だったとはな! 笑っちまうよ!」 「あの時、真美さんを守る為に組を離れたよな? 大丈夫だったのか?」 「ああ、実はな、他に訳がある」 「何だ?」 「勲、辛い思い出の話になっちまうが、あの時、お前、家族を失ったショックで暴走しただろう。それで組織はお前を危険人物と判断したんだろうな。少し離れたところからお前を監視するようにって事で、組を抜けるよう指示されたんだ」 「その後の任務は? 俺をただ『監視』するだけか?」 「それは、聞かない方が良いかもしれないぞ?」 「おい源治! ここまでお互い腹を割ったんだ、そりゃあないだろう?」 「まあ、それもそうだな……。実はな、その後の任務。それは、お前の監視と、再度暴走したときの処理、つまり殺害だったんだ。そう、またいつ暴走するか分からないお前のな。だから、勲があのビジネスを俺に持ちかけたのは僥倖だった。俺は知らず知らずのうちに長年、同胞が暴走しないように監視していたと、そういう事だ。そんな事もあって、その監視対象が実は同志だと知って心底驚いたさ」
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