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「まあ、苦学生のお小遣い稼ぎよ。あの時代はホワイトハッカーなんて、それほど認知されていなかったし、痕跡を残さずに機密情報を閲覧する事なんて造作もなかったわ……。政治家の裏金疑惑とか、芸能人の薬物乱用事件とか、そんなネタを見つけてはマスコミに垂れ込んで、報酬を貰っていたの」
そこには、そんな事を何でもない事のように平然と話すお母さんがいた。知られざる一面を垣間見て、お父さんも私も言葉を失った。
「他にもできるわよ。クロスサイトスクリプティングとか、ブルートフォースアタックとか……」
「真美、なあ頼む、日本語で話してくれないか?」
「あら、源治、語学は堪能なのにITには弱いのかしら? 私に何ができるのか、詳しく説明しましょうか?」
「いや、結構だ。日が暮れちまうし、多分俺には理解できん。で、その話と、このハイスペックで馬鹿高いパソコンを今買うことに何の関係があるんだ?」
「知りたくない? 鮫島の居場所」
「そりゃ、もちろんだが、そんな事、できるのか?」
「それはやってみないと分からないわ。まあ、逃げるにしても闘うにしても、敵の情報は重要よね。それを探ってみたいの」
「おう……。分かった」
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