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そう言うとお父さんはすぐにスマホで猪熊さんに連絡をした。
「おお、勲、久しぶりだな。悪い。時間が無いから手短に話す。金城が死んだ。俺たちの居場所がバレた。今すぐ逃げる。えっ、何? そっちは既に襲われた? 大丈夫か? おお、平岡も無事なんだな。ああ、ああ、そうだな……。もうそれしかない。でないとあいつら、地の果てでも追ってきやがるもんな……。分かった。現地で落ち合おう」
電話を切ると、お母さんと私に言った。
「メキシコへ向かう! 支度をしろ! 急げ!」
スカルノハッタ空港に向かうタクシーの中で、お父さんは書類の山から必死にメキシコの入国ビザを探していた。
「よし、あったぞ……。そうだ、日付がブランクだ……。それに、現地当局への根回しもいるな……。『印刷屋』の力が必要だ。ブロックMに寄る」
お父さんはブロックMの汚らしい雑居ビルに入り、ものの数分で出てきた。
「これで良い。行くぞ!」
お母さんが心配そうに言った。
「私達、国際指名手配犯なのよね? シドニーとロサンゼルスを経由するんでしょう? 大丈夫かしら?」
「なに、オーストラリアでもアメリカでも、入国ゲートは通らないんだ。堂々としてろ」
「そうね……」
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