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「源治、しかし驚かされた! まさか、お前がお嬢さんの父親だったとはなあ! そして、お母さん、かつての、あの夜に路地裏で出会った女性だったとは! 月岡真美さんだね?」
「いえ、今は右京真美です」
お母さんがそう言うと、助手席から振り向く猪熊さんの目が一瞬まん丸くなり、豪快に笑った。
「しかし真美さん。便利な時代になったねえ。機内のワイファイを使って、長旅の中、情報共有して貰えて助かった!」
思い出したかのように続けた。
「そうそう! これまたたまげたのが、真美さんがやり手のハッカーだったって事!」
また猪熊さんは豪快に笑った。
「もう、ハッカーだなんてやめて下さい。そんな大袈裟なもんじゃありませんよ」
一通り笑い飛ばすと、今度は真剣な顔で猪熊さんは後部座席の私たち三人に向かって言った。
「いいかい、もう我々は逃げも隠れもしない。鮫島がどこまでも追ってくるのであれば、こちらから叩く! もう、生き残るにはそれしかないんだ」
私は覚悟を決めて、その決意に満ちた眼差しを猪熊さんに向けた。
「おっと、お嬢さん、それに真美さん。君たちはお留守場だ」
「どうして?」
私は聞いた。
「ここから先は、本当に危険な戦いだ。だから源治と俺でやる。そして、お母さんには安全な場所で逐一情報収集をしてもらいたいのさ。そこに平岡の護衛もつけるが、お嬢ちゃん。君もお母さんを守ってやってくれ」
「分かった……」
そう言うしかなかった。
「で、勲、作戦とやらを教えて貰おうか」
お父さんが言った。
「決行は来月、チャンスは一度きりだ」
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