第二十話 銃撃と爆破

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   二○二六年 五月  メキシコのマンザニーロ港は闇に包まれていた。新月のその夜は、僅かな星明りのみが頼りだった。深夜の潮風は乾燥していて、大原港のそれとは似て非なるものだった。目の前の大海原は太平洋で、その遙か向こうには日本があるらしいが、全く想像がつかなかった。  俺はその静まり返った深夜の港で、そこに停泊する小さな漁船の様子を伺った。深い闇の中、その漁船だけが煌々と光を放っていた。茂みに隠れる俺の横で、勲が言った。 「真美さんの情報によると、受け取り人は二人らしい、もう一人が来るまで待とう」 勲の作戦はよく練られたものだったが、それ以上に驚いたのが、勲の資金力と調達能力だった。メキシコには、先代の組長から贔屓にしてもらっていたサプライヤーがいるらしく、驚くような武器弾薬の調達が可能だったのだ。  俺が着いた頃には、既に発注していたらしいが、先週、諸々の調達が完了した。四十五口径の拳銃二丁に、七・六二ミリのサプレッサー付きボルトアクションスナイパーライフル二丁、五十口径の対物ライフル一丁、ロケットランチャーのRPG一発……。  まるで戦争でも始めるのかと言わんばかりの装備だが、千載一遇のチャンスをものにするには必要だった。
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