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「よし、俺が運転する。久々に船頭の気分だ」
「おお、『おやっさん』頼むぜ!」
俺は懐かしさに笑みが溢れた。船を海岸に沿って西北西に走らせた。海の夜風が気持ちよかった。やはり、そこは紛れもなく、慣れ親しんだ「太平洋」だった。
道中、先ほどのライフル弾で息を引き取った「ホトケさん」達を海に投げ捨てた。日本ではあり得ない行動だが。治安の悪いその国では、銃殺された水死体など珍しくもなかった。真美からの情報では、受け渡しポイントはもうすぐだった。
そこからさらに二十分程走らせたところだった。その海岸線は全く灯りの無いエリアだった。恐らく、その向こう側が例のジャングルなのだろう。定刻ピッタリに、そのプロペラ機は現れた。勲が言った。
「思ったよりも高度が高いな……。RPGは射程外だ」
「この対物ライフルの出番ってわけだ」
「一発や二発じゃあ落とせねえぞ! 積み荷が投下されたら、即座に全弾打ち尽くせ」
「分かってる」
プロペラ機はこちらを視認したのか、近づいて来た。これも真美からの情報だが、指定されたアルファベットをモールス信号で、ライトの点灯を利用して伝えた。すると、そのプロペラ機は頭上を大きく旋回して、海上に白いパッケージをいくつか投下した。それを見て勲は叫んだ。
「源治、撃て!」
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