第二十一話 急襲

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そして、空のショットグラスを眺めつつ勲は続けた。 「今日、鮫島は唯一の飛行機を失った。それは主要な販売ルートの喪失を意味する。大麻は植物だ。急に生産を止める事はできない。飛行機をもう一機購入する財力はないか、あっても購入に時間がかかるとしよう。そうするとだ、その次に、真美さん、君がもし鮫島の立場だったら、どうする?」 「そうね……。結局麻薬の生産は継続される訳よね。そうしたら、それを何とか売りさばかなければいけないわ。別の販売ルートを探すわね」 「別の販売ルートを探すという事は、売値はどうなる?」 「飛行機の維持費と燃料代の代わりに車のガソリン代がかかるのかしら、あとは、小分けにするのだから、梱包の手間賃も違ってきそうね。それに、陸路で輸送するには、何か手の込んだ細工が必要になるんじゃないかしら……。よく分からないけれど、間違いなく売値は変わるわね」 「その通り、取引条件が変わるんだ。そうすると当然、価格交渉が必要になる」 「鮫島はきっと、沢山の変動要素がある難しい交渉の場を下っ端に任せるような事はしない。鮫島自身が現れる可能性が高いわね」 「真美さん、あんたやっぱり賢いな! そう、そこで鮫島を叩くんだ! やられる前にやる! 一気に畳みかけるんだ! そういうことだ、真美さん。彼らの動向を注視してくれ」 「ちょっといい?」 しばらく口をつぐんでいた春菜が言った。
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