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「勲、大丈夫か?」
「何の、これしき……!」
その柱は、男二人が隠れるにはギリギリの太さだった。勲は杖を持つ手でサブマシンガンのコッキングハンドルを引いた。俺は手元のスナイパーライフルを背負い、ホルスターから拳銃を抜いた。
「あのレストランを狙撃するなら、この建物しかないよなあ、オッサン! ところで、お目当てのターゲットはここにいるぜ!」
その妙に甲高く不快な声は間違いなく鮫島のそれだった。
「久しぶりだなあ、オッサン! それに、死に損ないの若頭! いや、今や元組長か? いやあ、事務所の階段を転げ落ちる間抜けな姿、ありゃあ傑作だったぜ! 杖なんかついちゃって、ザマあねえな!」
「この野郎、勲を突き落としたのはお前だったか!」
返事のかわりに足元を銃弾が跳ねた。俺は柱を背に聞いた。
「クソッ、しかし、なぜここが分かった?」
「いやだなあ、今やホワイトハッカーでの自衛は基本だぜ? あの子のお母さん、真美ちゃんって言うのかな? ちょっとおイタが過ぎちゃったねえ! アハハハハ! 今頃アジトは蜂の巣だろうよ!」
そう言うと、アサルトライフルのフルオート射撃の音が鳴り響き、柱は煙を上げながらその破片をまき散らした。太ももにヒリつく痛みを感じだ。銃弾をかすめ、血が滲んだ。
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