第二十二話 決戦の時

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 元岩谷組組長としての勲の調達能力は驚異的だった。夜明け前には小型の漁船が手に入った。そこに武器を積み込んで、夜明けに出発した。勲と俺は船上から双眼鏡で水辺をくまなく探した。  ほぼ一日かかった。それは、夕暮れ時だった。怪しい邸宅を見つけた。その邸宅のテラスは湖に突き出している木造二階建てだった。拳銃を持った見張りのような男達の姿も確認できた。 「源治、ビンゴだ」 双眼鏡を片手に勲が言った。 「一階のテラスの奥を見ろ」 俺も双眼鏡を覗くと、そこには両手を手錠で拘束された真美と春菜の姿があった。横には鮫島の手下らしき男がついていた。双眼鏡越しに春菜と目が合ったように見えた。次の瞬間、目を疑った。 「お嬢さん……。スゲーな……」 勲も驚いた。何と、春菜がその手下の男ひとりの腕に噛みつき、テラスとは反対側に駆け出したのだった。それを追って真美も駆け出した。もう作戦を練っている余裕などなかった。 「勲! 突っ込むぞ!」 そう言うと、俺はその漁船を邸宅のテラスに向けて全速力で走らせた。揺れる船体は銃弾の雨を浴びた。俺は姿勢を低くしてそれをしのぎ、勲も体勢を低く保ち、必死に姿勢を制しながらグレネードランチャーを全弾邸宅に向けて発射した。その弾は放物線を描き、六回の爆発は邸宅を半壊させ、そこにいた男たちも吹き飛ばした。  そこに、波しぶきに上下しながら、船が猛スピードで突っ込んだ。船が半壊した邸宅に乗り上げるや否や、俺と勲は船から飛び降り、真美と春菜を追う男二人にサブマシンガンの弾をばら撒いた。  男が倒れるのを確認すると、今度は目の前にバルカン砲を持った高峰が立ちはだかった。
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