最終話 旅立ち

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最終話 旅立ち

 そこには、目が覚めるように鮮やかなコバルトブルーの大海原に、どこまでも高く突き抜けた青い空、それに、綿飴のようなふんわりと柔らかい雲が広がっていた。大型漁船で駆け抜けるカリブ海は心地よかった。その時、広い操舵室には勲と俺の二人きりだった。 「まさか、また船旅になるとはな。どうやら俺はとことん船に縁があるらしい」 「ちげえねえな、源治! その船で、最終的に地球の反対側まで行っちまうんだから、人生何があるか分からねえもんだな。ガハハハ!」 「ところで源治、お前、いったいいつから気が付いていたんだ?」 「決定的だったのは、あの闇病院での再会の時だ。組に忠実だったお前が、『岩谷組はもう、俺の代で終わりにする事にした』なんて言った事だったな。それに、語学堪能で、その武器の取扱いに、あの立ち回り。あと、意外と賢いよな。いち組員としては出来すぎているだろう」 「違えねえ! 俺はこう見えても、インテリなんだぜ! サマチューセッツ工科大学を主席卒業さ! で、卒業のタイミング、二十二歳で組織からスカウトされて、三年間の訓練を受けて、組に入ったって訳さ」 「で、勲、組に入った目的は?」 「内部崩壊を狙ったのさ。静かに、ゆっくりとした、平和的な内部崩壊をな。俺が汚れた仕事を嫌うのを知っているだろう? 仕事を選べば、そのうち組の勢いは弱まり、消滅するのさ。まあ、随分悲惨な結果になっちまったが、目的は達成さ。図らずも、『崩壊させる』という意味では、組織の思惑どおりになっちまった。ところで源治、お前はどうなんだ?」
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