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「なるほどな……。その監視の目がもう少し厳しかったら、お前は俺の正体にもっと早く気が付いたかもな……」
「十年の潜伏期間も含めて、もう少し厳しく、逐一、その一挙手一投足を監視する事もできただろう。でも、それはしなかった」
「どうして?」
「勲、お前という人間を、その人間性を、信用していた」
「なるほどな。それはありがたい話だ……」
勲はそう言うと、杖をつきながらゆっくりと操舵室の窓辺に歩んで、キラキラと輝く水平線を眺めて言った。
「これでスッキリしたよ。相棒!」
上空ではカモメが鳴いていた。そこにはゆっくりとした時間が流れていた。
「ところで勲?」
「何だ?」
「俺たち、本当に『正式に死んだ』事になったんだよな?」
「ああ、組織が手をまわしてくれたんだ。この前のプロペラ機爆発事故で、源治、真美さん、お嬢さん、俺の四人が死んだ事になっている。つまり、国際指名手配の件は、犯人死亡という事で解決さ!」
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