エピローグ

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「あらあら、また大物が釣れたわね! カレッジの子たちを連れて来ても良いかしら?」 真美も帰って来た。 「ああ、いいぞ」 カレッジの子たちからの評判も良い。そこの生徒の紹介で、今度、産学連携の水産資源保護活動にも参画する事に決まったのだ。人生何があるか分からないものだ。  総じて、俺の人生は誰かに誇れるようなものではないし、失われた命は戻らない。その命に対する贖罪など、到底不可能だと思う。しかし、それが叶わないのであれば、せめて俺のやり方で、俺のペースで、多少の社会貢献をしたってバチは当たらないと思う。歳のせいだろうか。こんな俺に多少の奉仕精神が備わったのだから驚きだ。  そのパーティーはいつものように大盛況だった。ただ、この国の人には驚かされる。折角の大トロなんかの最上位の刺身にチリソースを付けたりして食べるのだ。なんてもったいない……。 「あー、お父さん、またそんな顔して! こっちの食べ方だって悪くないよ! 食わず嫌いはダメ!」 そう言って、春菜は俺にチリソースがべったりとついた大トロを差し出した。俺はそれを一口頬張った。 「うーん、俺は醤油で食べたいな……」 食の好みは人ぞれぞれだ。各々が好きなように食べれば良いと思えるほどの寛容さが、知らず知らずのうちに身についていた。これも年のせいだろうか。気付けば俺も随分と丸くなったものだ……。
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