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「源治! このマグロステーキも美味いぞ!」
勲が分厚く切ったステーキを勧めた。これも、香辛料がふんだんにかかっているものだった。
「おう、これは悪くないな!」
炭火焼きの風味とスパイシーな香りが何とも言えないハーモニーを醸し出していた。これは美味い。こうして異国の地で、良くも悪くも新たな発見を繰り返しながらゆっくりと歳を重ねる。悪くない生き方だ。
「源治、ちょっとお話できないかしら?」
「おう、どうした?」
真美は俺の手を引いて、会場の裏手の海が見えるテラスに行った。
「源治、ここに来て変わったわよね」
「そうか?」
「ええ。昔の荒っぽい源治も魅力的だったけれど、その時感じた魅力は好奇心からでもあったわ。今は違う」
「まあ、若気の至りだよな。恥ずかしいもんだ」
「今、源治に感じているのは『安心感』。今、源治のお陰でとっても幸せなの」
「なんだ、改まって。恥ずかしいじゃないか」
俺は気恥ずかしさの為に真美から目線を離すと、夕日に照らされながら寄せては返す大西洋の波打ち際を眺めた。すると、真美が俺の手を取って何かを手渡した。
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