残りのライフは1ですか?

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今回、マリベル・ベルドゥが自分のフルネームと分かった。 この語呂の悪い名前……聞いた覚えありなんだけど。 何だっけ、と頭悩ましつつ、目が覚めると、またもや同じ場面。 いましも王太子がお決まりのセリフを言いだしそうだ。 「エリノア・マクバード、お前との」   やばい、止めなきゃ! 「あの〜王太子様」 「ん?何だ、マリベル」 「あの〜、エリノア・マクバード様との婚約解消はやめられたほうが」 「は?」 「……だって」 きょとん顔を返されたけど、何ら理由は考えてなかった。 「あのですね、決められたお相手ですし、ゆくゆくは王妃様になるんですよ、エリノア・マクバード様以外は考えられないです」 だってそうでしょ? 言い切った私に王太子は眉を下げ、感慨深げに息をもらす。 「マリベル……君はなんと……こんなに心優しい女性、こんな人こそ王太子妃にふさわしい。そう思わないか!」 王太子の金魚のフンたちが一様にうなづいて賛同する。やばいわ、この流れ。 「あの、待ってください」 と言う私の言葉もエリノア・マクバードの側にいた侍従らしい男の言葉に遮られる。 あれ? 眼鏡に切れ長の目。確か、いやまさかね。と悩んでいると、 「お待ちください。王太子たちの横領の証拠がここに」 広げられた長い巻物、書類の数々。   そしてまたもや幽閉の身。目が覚めると同じ場面の真っ只中。   これ何回目? これが悪役令嬢もののお話の中で、私はヒロイン役で王太子とともに幽閉されるのはわかってる。 何とかそれを回避したくて、幽閉されるときに情報収集に頑張った。 そして。 「黒バラの君!?」 「ああ、そうだ、知らないはずがないだろうに。大丈夫か?」 門番が気味悪そうに見てきたが、これでこの世界がやっとなんのお話かピンときた。 「婚約破棄された悪役令嬢に転生したからには悪い奴らは成敗します!」てな時代劇みたいなタイトルで、黒バラの君と呼ばれている悪役令嬢、エリノア・マクバードが王子も悪い商人も、不正を働いてる輩をやっつけていく。 エリノアがキレイだわ頭の回転早いわでかっこいい主役なんだよね。 結構好きな話で、特に悪役令嬢の側で頭の切れる侍従のカスティバル推しな私。 ってことは、横領の証拠とかいう書類を突き付けてきたのってあのカスティバル!? おうっ。 思わず、床に手をついた。自分の推しにやっつけられるなんて。 なぜにやっつけられるヒロインに転生しちゃったのよ! しかも、今日、私は大変なことに気がついた。 またもや、カスティバルにやっつけられてる最中、あーあ、と自分の頭上に目をやったのだ。 そこには、小さな人型が浮かんでいた。 「何? 妖精?」 かとも思ったが、妖精が出てくるような話じゃなかったし。 よくよく見ると、人型の横には数字の2。 「2?」 待って。 これってもしかして。
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