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私はすたすたと壇上から下に降りると、カスティバルに書類を渡すように手を差し出した。
「何」
「書類をかしてください」
「これは重要な証拠だから渡すわけには」
「こっちの生死がかかってるんです!」
驚いた顔してこっちを見ているカスティバル。まじでタイプの顔だよなあ。なんて場違いなことを思ってしまう。
横で様子を見ていた悪役令嬢、エリノアが、
「渡してあげなさい」
と言ってくれた。
カスティバルは「わかりました」と渡してはくれたが、私の横で監視するように見ている。
書類をぱらぱらとめくった私。そこには長い文面と王太子のサイン。
問題はこれよね。
幽閉されるときに横領騒ぎの中、当の王太子はサインなんて知らない、と訴えていたが、実際サインがあるから誰も疑わなかったのだ。
私は紙とペンを用意してほしいとエリノア様に訴えた。
王太子様に、
「サインをしてください」
と紙とペンを渡すと。
瞬間、取り巻きのうるさい大臣たちが、顔色を変える。
「王太子様! こんなものの言うことを聞いてはなりません!」
「この小娘! 今すぐやめさせるんだ!」
サインを阻止しようとし、お付きの兵士が突然剣を向けてきた。
「うわあっ!」
私は思わず頭を抱えて目をつぶってしまった。
「やめろ!」
「やめなさい!」
カンっ! という激しい音につぶっていた目をうっすら開けると、カスティバルとエリノア様が私をかばい、兵士の剣を振り払っていた。
「いきなり非武装の女性に剣をふるうとは何事ですか」
カスティバルが盾のように庇ってくれて、エリノア様が王太子に向かい、
「さあ、サインなさいませ。このぐらい簡単なことでしょう?」
と紙とペンを差し出した。
少しばかりムッとした表情の王太子だったがサラサラとサインをした。
その用紙を手にしたエリノア様は、こちらを向くと、
「さて、これをどうする?」
と口角を上げる。
どのキャラよりも妖艶すぎて固まってしまいそうだわ。
「は、はい、じゃあ、こっちの書類のサインと」
わたわたしつつ、横領の証拠だという書類の王太子のサインと、今書いてもらった王太子のサインを合わせて透かして見る。
紙と紙を2枚合わせて透かして見るのをみんな不思議そうな顔をしてみている。
「よく似てはいますけど」
今度は並べてサインを見比べた。
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